白頭吟
あきらの誕生日祝い。リクOKということで、なあこさまに書いて戴きました。


行灯の淡い光に照らされた逞しい体に抱きつきながら、必死に唇を引き結ぶ。
立ち膝のまま快楽を押し付けられて、頭の先から腰の奥まで、甘くて鈍い疼きに痺れていた。
土方さんの目には、きっと淫奔に映っているのだろう。


「ゆび、やっあ、あっ」


中を掻き回す長い指に、体がビクリと痙攣する。膝がガクガクと笑って、腰が抜けそうだった。
熱くて堪らない。苦しい。いきたい。果てたい   
そんな欲望が色と形を持って、俺を追い込んでいく。


「お、ねがっ…!」
「痛いのは嫌だって、駄々をこねたのは誰だ?」
「っ……!」


解しても痛くて苦しくて、ついつい文句を言ってしまうから。今日は丁寧に慣らすと言われた。
最初は安堵したが、熱が蓄積していくにつれて、もどかしくなってしまったのだ。
(我ながら滑稽な話だけれど)


「まだ堅い、な」
「あ、ぁあっ!ひ、ぃあっ」
「こんなに締め付けやがって、とんだ好き者だ…」
「やぁ…!ちく、びっ…ぁあ、あーっ!」


カリ、と乳首を噛まれて舐められる。と同時に、後孔の奥が指を締め上げる。
ダイレクトにわかる感触と強い快感から、思わず逃げたくなった。訳が分からなく感覚が、怖い――。


「も、ゆる…して…っ」
「誰が、許すかってんだ」
「いぁ、あっ…ぁあっ」


首を横に振って拒んでも、当たり前だが刺激は止まらない。
潤滑油が足されては、閉じられた場所を乱暴に指で拡げられた。
早く早くと、体だけが急いて、期待が膨らんでいく。


「は、やくっ…!」
「まだ強張ってるぞ。泣くのはお前だろ?」
「もぅ、指で、いっちゃ…あっ!」


言うが早いか、体がガクガク震える。息が詰まる。果てそうに、なる――。

指だけで気をやるなど、恥でしかない。
半ば泣きながら縋り付いても、意地の悪い笑みしか返して貰えなかった。


「我慢すんな、ほら」
「いや、だ…ひ、や、ぁああっ!」


性感帯をグッと刺激され、押し出されるような感覚に抗えず、白濁を吐き出した。
ブルリと震える体は重力に従順で、呼吸をするだけで精一杯だ。

それなのに何の予告も無く押し倒され、息を整える間もなく灼熱の楔を打ち込まれた。
(嗚呼、俺を貪らんとする獣が笑っている)


「ひ、あ、ぁあっ!?」
「大分、具合は良い、なっ」


土方さんが上機嫌に笑った。
確かに常ならば、俺の体は異物を追い出そうと拒んでいる筈だ。
だけど今日は執拗に開かれて、熱い塊を容易に飲み込んでいる。

――必死にしがみ付いても、揺さぶられる体の疼きは、やり過ごすことが出来ない。


「わかるか?もう、綻んでるぜ…っ」
「あ、あっ、んんっ」
「美味そうに涎垂らしやがって…とんだ淫売だっ」
「ちが、ぁ、や、ああっ!」


粘り気を含んだ水音が鼓膜を揺るがす。淫売だと罵られて、カッと体に火がついた。
持ち上げられた足が、どうにも自分を淫乱に見せているようだった。
女のような嬌声を聞かせたくなくて、両手で口を塞ぐ。


「全く、いつも、可愛けりゃ、いいのによっ」
「あっ」


呆れたような声と共に手を外され、布団に縫いとめられる。
開いた胸に舌が這って、右の乳首を甘く噛まれた。


(だ、め…だ……きもちぃ)


ピリピリとした快感に腰が疼いて仕方が無い。頭は気持ち良さしか認識してくれない。
もう何も考えたくなかった。快楽に身を任せたかった――。


「う、う、んぁ、あーっ」
「気持ち、良いか?」
「ん、うんっ」


素直にコクコクと頷くと、それに対する褒美のように軽く唇を啄ばまれた。
そのまま深く深く舌を絡め取られて、膝を折り曲げられる。
青灰色の目が俺に欲情していて、少しばかり残った理性が優越感に浸った。


――奥まで、繋がる、満たされる。


両乳首を摘まれて、前立腺を突かれて、呼吸を止められて。
感じるのは快楽の波と、相手の熱だけ。


気持ちよくて、気持ちよくて、死にそうだ。


射精と共に、相手の熱を絞るように後孔が締まる。
短く呻くように息を吐いたところを見るに、俺を組み敷く男は満足したようだ。
ズルリと抜かれた楔。結合部から熱い欲液が流れ出るのがわかった。


「ん…ぁ…」
「辛い、か?」


無茶を強いる癖に、前髪を梳く指が優しい。俺は静かに首を振った。


「もっと…ほしい」
「欲しいなら、自分で出来るよな?」


自分で、動けと、言われて。顔に熱が集まった。
(それでも拒めないのは、受け入れてしまっているからだろう)

気だるい体を叱咤して褥に寝そべる男を跨ぎ、逞しい胸板に手をつきながら、ゆっくりと腰を下ろす。
息を吐きながら入り口に先端を押し付け、体が求めるままに受け入れていく。


「あ、あんっ」
「痛みは無いだろ?」
「う、ん…でも、くる、しっ」


大きさは変わっていない筈だが、内壁の圧迫感に体がガクガクと震えた。
熱が伝わって、より密着する。気持ちよさと、辛さ。


「あ、ひぃ、んっ、んっ」
「随分と、気持ち、良さそう、だなっ」
「は、ぁんっ、あ、ぁあっ」


重かった体が、腰が、自然に快楽を求め始める。
(俺の意思はそこに在るのだろうか)


「ほし、ほし、ぃっ」
「総、悟?」


この男と肌を重ねたという証が欲しい。
この男に求められたという印が欲しい。


「…泣くな」


土方さんが俺の腕を掴んで引き寄せたその勢いで、ズルリと男の象徴が抜ける。

何故泣いているのか、自分でもわからない。わからないけど、一つだけわかった。


「…す、き」


ゆっくりと瞬いて、眼下にいる男の唇を塞ぐ。


「ったく、お前は唐突過ぎんだよ…」


土方さんはクスクス笑って起き上がり、俺を抱きすくめながら髪を梳いてくれた。
何度も何度も、優しく梳かれて、その指先に欲情して。

再び押し倒され、期待してしまった。


「ぁあ、んあっ!」


ズプリと再び埋め込まれた欲望に、涙が零れる。
(憎い男。それでも、求めてしまう男に、愛されて――)


「イイ、かっ?」
「あ、ぁ、ん、うんっ」


俺を子供だという癖に、こうして興奮する男。
その顔は、この世のものとは思えないくらい、淫靡だった。

昇る、上る、登り詰める。
体が限界だと訴えて、今にも欲望がはち切れそうだ。


「ひゃ、ぁあっ!」


性感帯の刺激を受けながら、性器を握りこまれ、塞き止められた快楽に気が狂いそうになる。
なんて理不尽なことをするのだ、と泣きながら訴えた。


「いやっ、ぁ、はなしてっ」
「まだ、だっ!」
「いきた、ぃぁあっ、あ、あーっ」


吐き出したいのに、熱が体の中で暴れまわってる。
苦しさと切なさが思考を鈍くさせて、今にも失神しそうだ。
それなのに、土方さんは更に激しく攻め立てる。


「もう少し、なっ」
「ひ、ひぁっ、あ、あ…!」


イヤイヤと首を横に振って、必死に理性の一端を掴む。

許して。赦して。ゆるして。意地悪、しないで――。


「そうご」


優しい目。柔らかい声。頬を撫でる、熱い指。
俺を求める男の甘言と、理性を追い詰める淫情。

――もう何も、考えられなかった。


「いか、せて…ひじかた、さ…ん」
「…イイコだ、総悟」


クシャリと俺の頭を撫でて、土方さんは満足げに笑う。
額と、右頬と、鼻の上、そして唇にキスを受け、そのまま舌が絡み合って、奥まで溶け合うように貪った。


「ん、んふ、ぅ、んーっ」


俺の欲を塞き止めていた指が緩められ、今度は吐き出すように促される。
前と後ろの刺激に目の前がチカチカして、寄り縋りながら、半ば泣き叫んだ。


「あ、あーっ!」
「凄い、締め付け、だなっ」
「やっ、い、く、いっちゃ、あああっ」
「っ…!」


ぐッと息を詰める気配に、微かに震える広い肩。
体内の奥に精を吐き出されたのだと実感する余裕はなかった。


「あ…あぅ…」


自分が出した白濁が、自分の腹を汚す。中が熱くて、脳髄まで溶けてしまいそうだった。

お互い荒い息を整えて、後孔に収まっていた異物が引き抜かれる。
土方さんが何か言いたげに俺の頬を撫で、溢れる雫を舐め取った。


「意地の悪いことを、したな…すまん」


すまない、と謝る声に俺はゆっくりと首を振る。そして子供のように抱きついて、ただただ静かに泣いた。


「ひじか、たさっ…すき。だいすき」
「知ってらぁ」


心臓がトクトク鳴っている。俺のいとしい、命。

その心音に包まれながら、俺はそっと目を閉じた――。


素敵な「焦らしプレイ」と「オネダリ」を有難うございますw

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