| 寒風吹き荒ぶ如月の宵、内海の倉庫街には事前の打ち合わせ通り、真選組の面々が集っていた。 海に面している所為で冷え込みが厳しく、一刻も早く仕事を終わらせたい。 屯所に戻ったら、いつもより少し熱めの湯に浸かろう。 俺はそんなことを考えながら、近藤さんと土方さんと共に、本陣で最終確認をしていた。 「今夜は、トシも捕縛へ回ってもらうが、他は通常通りだ」 「ああ、任せてくれ」 紫煙を燻らせながら、土方さんが答え、更に言葉を続ける。 「総悟。きっちり船を、潰して来いよ」 「言われなくたって、真っ二つにしてやりまさァ」 「待って待って! それだと沈没しちゃうからァァァ!」 今回の捕り物については、密輸目的の荷物をのせた船が着岸した瞬間を一斉に検挙する俺たちと、陸で待ち構えている積荷の引き取り手――首謀者――を捕縛する土方さんたちとに班分けし、同時進行で行われる。 つまり、どちらか一方が失敗すれば、ややこしくなるのだ。 「アンタ、最近采配してばかりだったでしょう」 「まあな」 「足、引っ張らねェでくだせェよ?」 「言ってろ。糞餓鬼」 揶揄い半分に言ってみても、土方さんは何処吹く風というように、煙草の煙を吐き出すだけだった。 「まあまあ、皆さん。お茶でも飲んで温まって」 気を遣った山崎が、魔法瓶に入れてきた緑茶を紙コップに注いで俺たち三人に配ってくれる。 「おう。悪いな、山崎」 「気が利くじゃねぇか」 「ザキのクセに」 「――…沖田さん。偶には、褒めてくださいよ……」 この場にそぐわない、ほわほわとした湯気が立つ緑茶は一口飲む度に、冷えた体に染み渡った。 そんな風に和やかに待機時間を本陣で過ごし、船が到着する半刻前を目途に持ち場へと各自が移動する。 既に平隊士たちは配置に就いており、手短に状況を説明してくれた。 「着岸は予定通りの時刻だと思われます」 「船員の処遇は、当初と変わりないですか?」 「ああ。全員とっ捕まえろィ。ただ、テメェの命が危ねェと思ったら――斬れ」 目的は飽くまで積荷であることを改めて伝え、何より命を優先しろと言い含める。 狭い船内での遣り合いになるのだ。 銃器を出されたら圧倒的に此方が不利になる。 どうにしろ、俺が先頭に立つ以上、守り切ってみせるけれど。 「時間だ。行くぜィ。テメェら」 ごぉん、ごぉんと音を立てて港に迫る船の影を見つめながら、号令を掛けると、一番隊の隊士たちは小さく頷き、刀の柄に手を遣った。 |