※江戸の散らぬ戀さま主催・2012.7.8発行「愛でなせェ!」に寄稿しました 毎年恒例の二連チャンの宴会。 二日目の夜ともなれば皆ぐでんぐでんになっている。 その中でいつものポーカーフェイスをぶっ飛ばしてニコニコとプレゼントを受け取る総悟は、やはり毎年恒例で俺に近づこうとはしなかった。 ここ数年の俺は、総悟に何もやっていない。 と、言うよりも…。 見つめる先にいた総悟が一瞬こちらを睨みつけてくる。 …総悟は俺がアタリを出すのを待っていて、アタリ以外は要らないと、何をやっても受け取り拒否を続けているのだ。 「ガキ」 誰に言う訳でもなく呟いて、俺は宴席を抜けた。 広間から離れた場所にある自室の前まで来ると、庭に据えられた巨大な笹が目に入る。 お祭り好きの真選組に相応しく、昨日盛り上がって飾り付けられた笹にはこれでもかというほど短冊がぶらさがっていた。 夜風に当たりながら煙草に火を点ける。 流れていく紫煙と靡く短冊を何気なく見て、俺は総悟の短冊に今日のヒントがあるのではないかと思い至った。 しかし仮にそうだとしても、この膨大な量の短冊から総悟のものを探し出すのは不可能に近い。 「…あ?」 思わず一人声を漏らした。 高い位置で翻った一枚の赤い短冊。 夜目にも総悟のものと判った。 縁側から庭に降り、刀を使ってその短冊を下ろす。 「ガキ」 何も書かれていない赤い短冊は、ヒント、というより答えだろう。 そう確信して、かちり、ライターを点けた。 「よくもこんなモンあんなトコに…アイツは」 溜息が出る。 短冊を着流しの袂へ押し込んで、俺は広間の総悟へメールを入れた。 「何か用ですかィ?」 言葉と一緒にスパンと襖が開いて、仏頂面の総悟が現れる。 何か用か、と訊く割には早い登場をした総悟に、噴き出しそうになった。 突っ立っている総悟を部屋の中に引き入れて襖を閉じる。 総悟が軽く息を飲んだのが聞こえた。 「プレゼント、やるよ」 言うと総悟は硬かった表情を一転させてニヤリと笑う。 「アンタ当てたコトねぇじゃないですかィ」 「今年は当たるンだよ」 俺は総悟の腕を掴んで、引き寄せ、そのまま口吻けた。 「お前、飲んでねぇのか」 酒の匂いがしないことを指摘すると、総悟の表情が再び強張る。 「は、離しなせェ……ぅ、ん…っ」 総悟の両手は俺の胸へ置かれて抵抗の形を取っていたが、それは形だけでしかなく、口吻けを続ければすぐにいつものように背中へ回ってきた。 「ん、ん…ぅ」 口吻けながら総悟の着物の合わせ目を寛げる。 「やでさ、や…」 腕は俺の背中にあるのに、離れた唇は拒絶の言葉を放った。 「アタリだろ?」 俺の言葉に目を丸くした総悟がひゅっと喉を鳴らす。 何も言えない総悟の、乱した衿から差し入れた手で突起を弄る。 「ぅ…っあ」 総悟の膝が折れて体が崩れそうになった。 「ひじ、かたさ…」 「アタリ、だろ?」 意地悪く畳み掛けた俺に降参したのか、総悟がこくりと頷く。 「待ってろ」 俺は落ちそうな体を片手で抱き、総悟を立たせたまま袴の紐を解いた。 下着を下ろして晒してみれば、既に主張し始めているのが解る。 緩く握り込んでゆっくりと上下させた。 「うあ…っ! あっ。…ん!」 震え出す両足につう、と先走りが垂れていく。 「いつもより早ぇな」 「も、や…っ! や、あ…立て、な…あっ!」 「立ったままイけよ」 俺の提案に総悟は必死に頭を横に振った。 それでも手を休めない俺に、やがて総悟が小刻みに体を震わせる。 「や…あっ。ひじかたさ…んっ! う、あああっ!」 「おっと」 声を上げ、ぐん、と仰け反ってイった総悟を支えきれずに、俺は総悟を抱えたままその場に膝をついた。 「ぅあ。あ。…はっ」 休ませることはせずに、横たえた総悟の体に口吻けていく。 同時に総悟が放ったものを指に纏わせて、つぷりと後ろへ沈ませた。 「ひ、あ!」 「なあ…お前なんで、コレがプレゼントなんだよ?」 くちくちと指を動かしながら尋ねてみるが、総悟は喘ぐばかりで答えない。 増やす指を止めて答えを待っていると、総悟が焦れたように動いた。 「は、やく…早く、くだせ、ェ…っ」 珍しい強請り方が腰にキたので、指を引き抜き自分を宛がう。 「総悟」 確認を取るように呼ぶと総悟がこくこくと頷いた。 いい加減限界に近かったので、少し可哀相にも思ったが、一気に奥まで挿れる。 「う、ああ、あ――っ!」 流石に総悟が悲鳴めいた声を上げたが、前を愛撫するとすぐにそれは色付いた。 「ふ、あ! ああっ! ん!」 動く俺に合わせて総悟の口から嬌声が零れる。 ぐっと突く度に総悟は背を撓らせ、無意識に上へ逃げようとするので、細い腰を掴んでは引き戻した。 「なんで、コレなん、だ?」 何度訊いても総悟は答えようとはしない。 その頑なさが、不自然、だった。 限界も限界だったが、動くのを止めた。 「う…ぁ、ん。ひじか…ひじ、かたさ、ん!」 途端に総悟が俺を呼んで抗議するが、そんなものは聞き入れない。 「ひじ…たさ、動いて、くだせ…」 総悟の細い声が、またも珍しい強請り方をした。 それでも俺が動かずにいると、総悟はくっと息を詰めて顔を背ける。 顎を捉えて顔を覗き込むと、上気した頬に、涙が、伝っていた。 「オイ、何泣いて…」 「黙って…動いて、くだせぇ、よ」 言いながら総悟は俺の首に両手を絡ませて掻き抱くようにしながらしがみつく。 耳元に感じる熱い吐息に、堪らなくなって、誘われるままに再び動き出した。 「泣くな、って」 「う…っく、あ…あ、…ひっく…ぅ」 泣きながら喘ぐ総悟が気になって、ゆっくりと動いていると、またも総悟が愚図る。 「だから! 理由を、言えっつって、ンだ!」 「言った…ら、嫌、われ…あうっ!」 一度激しく突き入れると、総悟は泣きながらとうとう叫んだ。 「生まれた日くれぇ言うこと聞いて! 俺ン中だけ、いてくだせェ!」 そうして俺からふっと上体を離して、畳にとすんと背中を落とすと、両手で顔を覆ってしまった。 「お前は、どうして、そうなるンだよ」 俺は総悟の手を引き剥がして手首を畳に押さえつけ、そこからは容赦なく総悟を貫いた。 「ひ、じか…っ! やあ…ぅ、ああっ!」 はあっと大きく息を繰り返しながら、総悟が大きく体を反らせる。 「…は、あ! や…っ! ああああっ!」 二、三度激しく腰を打ち付けると、前には触れていないのに、総悟はびくりと震えて達した。 終わった後も総悟は静かに涙を流していた。 力が抜けてしまっているその体を引き上げて座らせると、漸く俺に抱きついて寄りかかってくる。 「今日シたかったのは、さっきのか?」 俯く亜麻色の髪をそっと梳くと、小さく頭が縦に振られた。 「なんでああなったんだ?」 総悟がちらりと俺を見上げる。 「…アンタの全部が、俺だけだ…って、一瞬で、イイんで」 空頭の暴走は珍しいことではないが、ここまで見事な暴走をするとは、最早天晴れだ。 しかもこのバカは、俺がアタリを引き当てた今年まで、暴走した頭のまま、今日をずっと一人で過ごしていたのだろう。 長い溜息を吐いた俺を見て、何か勘違いをしたらしい総悟の瞳がゆらりと揺れ出した。 「バカ違ぇよ! 泣くなって!」 「だって、アンタ、こんなのは、独占欲って…みっともねぇ」 総悟はぎゅっと目を閉じて、再び下を向く。 「独占しときゃ、イイだろが」 小柄な体を抱え直した俺に、すぐに「駄目でさ」と声が上がった。 「真選組には駄目でなんでさ。副長のアンタには駄目なんでさ」 そんなものは邪魔になる、と総悟は何度も繰り返す。 「ガキ」 総悟の綺麗な赤い瞳がきょとんと開かれた。 「俺はンなコト解ってて、お前んナカ出入りしてンだけどよ」 軟らかいままの後ろへ指を滑らせて言葉通りに動かすと、総悟から必死の答えが返ってくる。 「あっ! 駄目でさぁ! 今日の、俺だけ…ぅあ、あっ」 「やなこった」 瞬間、総悟の全身に力が入った。 「昨日も、今日も、明日も、お前だけだ」 「ぅああ! 駄目…い、今だけ。あ…う」 俺はとことん勘違いをする総悟に苦笑しながら、解るように言ってやる。 「真選組の別格扱いは、お前も同じだろ…だから」 「んぅ!」 ぐっと指を折り曲げると、総悟が反射的に腰を揺らした。 「お前も、俺だけだって言えよ、総悟」 一瞬にして飛びついてきた総悟は、嗚咽も喘ぎも一緒くたに殺して、ただ震えていた。 いつの間に降り出したのだろうか、雨の音がする。 総悟を抱きながら、俺はあの短冊が濡れずに済んだことへ密かに感謝した。 とっくに放った着流しの、袂からはらりと舞った総悟の赤い短冊は、俺が炙った所為で焦げ目がついている。 『ひじかたさん』 それだけが浮かび上がった短冊。 「ひじかたさん」 腕の中の総悟がうわ言のように俺を呼ぶ。 季節を外れて啼く、狂った鶯のように、甘く切ない声で。 |