ドゴオッ! 「死ねェ! 土方ァ!」 爆音と共に総悟の声がした。 俺はすれすれでバズーカの砲弾をかわす。 「何しやがんだ! テメェ!」 「テメェの胸に手ェ当てて訊きやがれ!!」 またもバズーカの照準を合わせて総悟が怒鳴る。 「アレはお前も悪いだろーが!!」 負けじと俺も怒鳴り返した。 爆撃が止んだと思い、少し安心して屯所の廊下を歩いていれば、ギラリと光る白刃が俺を掠める。 鞘を抜かないままの愛刀で受け止めながら、またも怒鳴り合いを始める俺たち。 最早隊士たちは誰も近づけない状態だった。 唯一俺たちを止められるだろう近藤さんが出張していることが、更なる不幸を呼んでいた。 それくらいド派手な喧嘩を、俺たちはこの2週間ほど繰り広げていた。 流石に俺も反省はしている。 いつものようにサボリを決め込んだ総悟が、よりにもよって万事屋の野郎と甘味屋でアイスクリームを食べながら何やら話していた。 ただ、その顔が満開の笑顔で、無性に腹が立った。 そこにこともあろうか万事屋が、総悟の口元についたアイスクリームを舐め取ったのだ。 明らかに俺に視線を送りながら。 有無を言わさず総悟を引っ張って屯所に戻る途中、総悟に言われた台詞でキレた。 「土方さん、旦那に嫉妬? “あんなこと”くらいで?」 総悟は恥ずかしい~と呟き、ニヤリと笑って俺を見た。 その夜は、もうやめてと総悟が本気で泣き出しても、俺はやめてやらなかった。 そして、現在に至る。 死ねだの何だのと攻撃が止まない総悟には、当然話し合うという方法が通用する筈もない。 エスカレートする一方の攻撃が2週間も続けばうんざりするし、はっきり言って別の問題が持ち上がってきていた。 2週間総悟にまったく触れていないという、俺にしては喧嘩の内容よりも切実な問題だ。 総悟の方はまだ俺を攻撃することに興奮しているので、問題はないのかもしれない。 だが、それを総悟に切り出せば火に油となるのは解っている。 その日の書類を片付けた俺は、屯所の被害状況報告に頭を抱え、邪な自分の問題にも頭を抱え、明日くらいには大人しく謝るべきかと考えながら布団に入った。 問題は、謝ったところで総悟が素直に聞き入れてくれるかどうかだが…。 ふと息が詰まるような感覚で目が覚めた。 俺は上体を起こそうとして、この世で一番苦手と思われるものが腹の上に乗っていることに気づき、どっと冷や汗をかいた。 固まって動けない俺の上からそれも動くことはなかった。 しかし暫くすると押し殺した笑いが漏れてきた。 「アンタ、お化けと思いやしたね?」 総悟だ。 「…随分悪趣味じゃねーか。テメェ何のつもりだ」 腹の上に総悟を乗せたまま枕もとの明かりを点けた俺は、照らされた総悟の表情を見て後悔した。 この顔はドSモードが発動している時のものだ。 「2週間、経ちましたねェ…」 口の端を持ち上げて、総悟が言う。 「そうだな」 どうすればこのサディスティック星から来た王子の餌食にならずに済むのか、俺は総悟から視線を外して頭をフル回転させていた。 「…こっち見ろよ、土方」 最早命令形かよ!? というツッコミは敢えて入れないことにして総悟を見る。 艶然とした微笑みを浮かべて俺を見下ろす総悟は、とんでもないことを口にした。 「ここ、大変なんじゃねェですかィ?」 俺の腹に乗ったまま少し腰をずらした総悟は、器用に布団をめくって、いきなり俺の下半身に手をやった。 思わず息を詰めた俺は、そこであることに気がついた。 今、腰をずらしたことで布団の上から直に俺の腹に乗ることになった総悟の方も切羽詰った状態になっているのだ。 やれやれと総悟に手を伸ばそうとした時、鞘に収められたままだが菊一文字が突き出された。 「おっと、触らないでくだせェよ?」 手を引っ込めた俺は少し余裕を取り戻し、ドS王子の好きにさせてみることにした。 すると総悟は俺の下半身に添えていた手をいきなり動かし始めたのだ。 「…っ」 これには流石に驚いた。同時にマズイとも思った。 「何、する…」 問いかける俺に、笑みを浮かべた総悟は手を休ませずに言い放つ。 「俺が、何回でもイかせてあげまさァ。ただし、挿れさせてはやりやせん」 (なんだと!? 今コイツなんつった!?) 焦る俺に構わずに、総悟はにっこりと笑った。 しかし、俺が追い立てられるにつれて、総悟の様子が少しずつおかしくなってきた。 「おい総悟。お前、腰揺れてるぜ?」 「るせぇ…!」 指摘してやると薄暗い明かりでも解るほどに総悟が真っ赤になった。 構えている刀は少し震えているし、抑えているが呼吸も僅かに乱れている。 目の前のドS王子は、呆れるほど可愛らしい生き物になっていた。 「…ぅ」 総悟から小さな声が漏れたと同時に、俺は体勢を入れ替えた。 ついでとばかりに刀も叩き落してやる。 「俺の、触ってこんなになってんのか?」 総悟を押さえつけて、逆に緩く握りこんだ。 「ひう!」 そのままさっきされていたように手を上下させると、総悟は懸命に声を殺して俺を突っぱねようと両手を胸に押し当ててきた。 「俺っ、まだ怒って、るんです、ぜ…っ!」 「悪かったな」 謝罪は明日にでもしようと思っていたのだから本物だったのだが、この状況下では多分信じてもらえないだろう。 「う、あ…っ」 それよりも、聞こえているのかどうか。 より一層責め立てると、総悟が制止の声をあげた。 「やめっ! やっ! も…ッ」 「イケよ」 俺の言葉と同時に、温かいモノが俺の手の平を伝った。 「や、いやあー…っ!」 本気ではない拒絶なので俺は軽く聞き流して、今達したばかりで敏感になっている総悟自身をもう一度そっと包んで手を動かす。 「挿れなきゃ、何回でもいいんだよな?」 俺が意地悪く言うと、総悟はいやいやをするように首を振った。 「…れ…て…っ」 「何だよ、聞こえねぇ」 総悟が言いたいことは予想はつく。 つかない方がおかしいだろう。 「バカひじか…、い、れて…っ」 涙目で言われてくらくらしたが、ここでコイツにもう一言言わせておかなければならないことがある。 「俺はさっき、謝ったんだが?」 動かす手を少し強めて言うと、総悟が悲鳴を上げた。 「ひ…っ! う、ご…めんなせ…っ! 言った…からぁ」 もう滅茶苦茶な総悟は本当に反省しているのか解らないが、俺もぎりぎりだったので総悟の後孔へそっと指を差し入れた。 総悟が感じる場所だけを責め続けるように指を抜き差しする。 充分に解れた頃を見計らって、細い腰を掴んで中に押し入った。 「あぁ…ぁっ」 総悟が俺にしがみついて、挿入の瞬間の圧迫感をやり過ごそうとする。 額に浮かんだ汗が、つぅと流れた。 「入ったぞ」 すべて挿れ終えると俺は総悟の息がまともなものになるのを待った。 「ん、はぁっ、ひ…かたさっ」 「なンだよ、息しろ」 促しても総悟は整わない息の下から俺を呼んだ。 「へいき、だからっ! 動いて…っ」 限界だった俺は、重い切り腰を動かした。 「アァ――っ」 総悟の高い声が、長く尾を引く。 「や! あ、あっ! ぃやあ!」 否定の言葉ばかりで喘ぐ総悟の口を軽いキスで塞いで、俺は総悟の耳に唇を寄せた。 「ヤ、じゃねぇだろ? イイくせに」 「…ぅ、やっだ…っ」 プライドが邪魔して「イイ」と言うことが出来ないのはいつものことだ。 言わせてみたいのは山々だが、俺に余裕がなくなってきたので総悟の一番弱い場所を突く。 「ひあっ! あぁぁ…っ、そこ、やあぁ!」 そのままずっとソコを責め続けていると、やがて総悟が背をしならせた。 「んんっ! ンあああぁ…っ!」 総悟が達した瞬間の締め付けに、俺も欲を放った。 汗で額に張り付いてしまった亜麻色の髪をかき上げるようにして総悟の顔を覗き込むと、予想通りぼんやりとしていた。 しかし、体を繋げたままだった俺が少しだけ動くと、すぐにびくりと反応して赤い瞳が射抜くように俺を見る。 「…早く、抜き…!?」 言いかけた総悟は、途中で言葉を失った。 「…ぁうっ! アンタまだ、する、つもり…?」 「2週間ぶりだぜ?」 ニヤリと笑って少しずつ動くと、総悟は白い肌を真っ赤に染めてすぐに声を上げ始める。 俺の動きに合わせてひっきりなしに喘ぐ総悟の声は恐らく明日には枯れているだろうと苦笑した。 (あー、そんでまた明日には…) 総悟の体を貪りながら、俺は考えても仕方のないことを少しだけ考えた。 「死ね、土方…」 翌朝、寝床から起き上がれなくなった総悟が、かさかさと掠れた声で言いながら俺を睨みつけた。 「喧嘩ならもう暫くしねぇぞ」 俺は水の入ったコップを手渡しながら総悟に宣言する。 しかし総悟はコップを受け取らずにツンと横を向いてしまった。 横顔が仄かに赤くなっている。 俺はコップの水を口に含むと、総悟の顔をこちらに向けさせて直接水を飲ませてやった。 「な、な、何しやがんでィ!」 「して欲しそうだったじゃねぇか」 真っ赤になって黙り込んだ総悟に、覆い被さるようにしてキスをする。 程なく俺の首に総悟の両手が回された。 漸く屯所に平和が戻ったその日、近藤さんが無事出張を終えて帰ってきたが、俺と総悟の手によって広げられた惨状を見てぶっ倒れた。 |